ひとことば

漁網の手入れをする漁師。

アルワード島

海が見たくなって、地中海沿いのタルトゥースに寄り道した。内陸にあるシリアの街よりもずっと暖かい。3月なのに、バスターミナルから街まで歩くだけで、汗ばむくらいだった。

一日中海のにおいがする。レストランの店先にならんでいる魚を見るのは、シリアにきてはじめてだ。漁港の桟橋から出ようとしていた小舟で、沖合に浮かんでいるアルワード島に渡った。

小さな島だ。レストランはいくつかあるが、季節はずれでどこも休業中らしい。漁網の手入れをする漁師。壁に描かれた船と魚。絵になる島だ。


桟橋で、島の子供が迎えてくれる。

島に車は1台もない。もし車を持ち込んだとしても、走れる通りは1本もない。

電気や水道も貧弱だ。島の生活は、お世辞にも便利とはいえない。

すぐそこに見えるタルトゥースの街なら、ずっと現代風な生活ができるはずだ。しかし、人々は島を選んでいる。


迷い込んだ外国人をおもちゃにする子供たち。

こんな小さな島なのに、いや、島が小さいから、子供が目立つ。

子供たちにとっても、楽しい遊び場がたくさんあるわけではない。みんな新しい遊びの「発明」に熱心だ。そしてしばしば、大人の期待をみごとに裏切る残酷さを発揮する。

羊をいじめて遊んでいた小僧たちに見つかった。彼らにとっても、羊にとっても、今日はいい日だったに違いない。


3人の悪ガキに、先回りされた。

路地のひとつひとつに表情がある。1時間もあればひとまわりできてしまう島を、ふた回りはした。桟橋で出迎えてくれた彼らにも、2回は出会している。

こうしてページを作っている今も、壁に掛かったこの写真に見られている。島で過ごしたのはたった3、4時間だけれど、この島でもらった時間は宝物になった。