水辺のある土地は気分が安らぐ。ビクトリア湖岸の街、ムワンザに立ち寄ったぼくは、この国にあるもう一つの湖、タンガニイカを目指して旅を続けた。
車の旅はケニアのキスムからムワンザの間で、もうたくさんな気分になっていた。今度は列車にしよう。
ムワンザからタンガニイカ湖畔の街、キゴマまで列車で旅する。
ちょうどまん中あたり、タボラという街で、列車は乗り換えだ。しかし、次のキゴマ行きは明後日だった。
なにもない街で、2晩を過ごす。本当になにもない。動くかどうかも、誰のものかも分からないトラックの荷台に腰掛けて、ポーズをとる男の子がいる。なにも言わず、ただ微笑んでいた。
夕方、中国製の自転車が行き来する並木道に優しい影ができる。ゆっくりしていけ、そう囁いてくれている街だった。
子供はたくさんいる。2晩の間に、大勢の子供たちと顔見知りになった。
この街に外国人が来ることは決して多くない。日本人と話をするのは、初めてだと言っていた。永らくイギリスの委任統治領だっただけに、英語のできる子も何人かいる。
再び汽車に乗る日が来てしまう。遅れてほしかったけれど、時間どおりだそうだ。10人以上の大部隊が、さよならを言いに来た。
並木道の大木の木陰に、開いている店があった。子供相手の品物を並べる店に集まってくるのは、なぜか大人ばかりだ。
こんな街に暮らしていると、子供は子供のまま大人になれるのかもしれない。
中学校で配られた地図帳に、タボラが記されているのを見つけた。そのページには、ずっと栞をはさんである。