ひとことば

タンガニイカの浜。ボートの縁に腰掛けるザイールの人。

タンガニイカ

ウジジはタンガニイカの沿岸でいちばん古い街だと言われている。スタンレーがリビングストーンを発見したマンゴーの木は、ここにある。

浜で会った二人はザイールから来たそうだ。鉄道は隣のキゴマに敷かれ、湖を往復する汽船からも取り残されてしまったウジジに、なぜやってきたのだろう。

ここにはなんにもないけれど、居心地がいいのは確かだ。古い街らしい人の迎え方があるのかもしれない。


青空の下、浜で船が組み立てられる。

ウジジの浜はきれいだ。その浜で造られる木造船が、ウジジのささやかな産業になっている。

電動工具の音はまったくしない。昔から変わっていないであろうその作業が、タンガニイカの波音よりも静かに、船を組み上げてゆく。

ときどきタンガニイカで泳ぎながら、一日仕事ぶりを眺めていた。日が沈む少し前、作業は切り上げられる。今日は完成しなかった。


湖ではいちばん大きな船リエンバ号。船が沖留めされると小舟がたくさん近付いてくる。

ドイツが植民地時代に持ち込んだMVリエンバ号。とっくの昔から骨董品になっているのに、相変わらず湖を行き来している。

ブジュンブラからキゴマを通ってムプルングまで、週に1往復する。湖ではほとんどただひとつの移動手段だった。

この船には、いや正確に言うとMVリエンバ号の旅には、ひどく不自由なところがある。船の着岸すべき桟橋がまともに整っていないということだ。

汽笛を鳴らしながら集落の沖に停泊すると、「はしけ」代わりの小舟がMVリエンバ号めがけてやってくる。


リエンバ号に横付けされた小舟。湖上バザールがはじまる。

わずかな乗り降りには縄ばしごを使う。湖とはいえ波も結構あるタンガニイカ。足がすくむ。

乗り降りする客は余録みたいなもだ。MVリエンバ号のより重要な役目は、湖岸の集落に貴重な現金収入をもたらすことだ。

わずかな船の停泊時間だけ湖上に現れるマーケットには、たくさんの生活がかかっている。


ひらひら揺れる小舟で、海のような湖水を切ってゆく。

ラゴサの沖でMVリエンバ号は投錨した。ここにももちろん、桟橋はない。いつもと同じように、星のきれいな夜だった。

わずかな明かりを頼りに、乗り移った小舟はラゴサの浜にたどり着く。目的地のマハレ山塊国立公園はまだ先だ。迎えの船を夜の浜で待っていた。

海のように大きなタンガニイカ。小さな船は笹の葉みたいに揺れる。それでもエンジンが付いている迎えの船は、湖をゆく船の中でも上等な部類に入る。ぜいたくは言えない。


知り合いの猿がこっちを見ている。

マハレ山塊国立公園はLonely Planetのガイドブックのいちばん最後に載っていた。記事は1ページにも満たないけれど、要点を得ていて正確だった。なにより最後のページはすぐに開けるから便利だ。

チンパンジーが見たくて、わざわざこんなところまでやってきた。MVリエンバ号に乗ったキゴマからは、日本人の写真家Iさんが道連れだ。カメラのアングルが参考になる。

チンパンジーと同じように、ブッシュをかき分けてすごした。黒くて、露出が難しい。写真映りは悪いが、チンパンジーはアフリカのどんな野生動物よりも見ていて楽しい。「知り合いの猿」も何人かできた。