ひとことば

部屋の大きさ

旅行をしていると「とんでもない宿」に出くわすことがある。「冷たい温水」、「水なし」、「虫付き」、いろいろある。

ケニアという国には、中級ホテルがほとんどない。「国内旅行」を楽しめる程度の「中流階層」がいないのであろう。ホテルの選択肢はいきおい、外国人ツアー客を受け入れる「高級ホテル」か、「安宿」のどちらかになってしまう。両者のお値段には「0」が2つ違うくらいの開きがある。「高級ホテル」に泊まっていてはすぐに破産してしまうので、「安宿」にする。

ナイロビでは、比較的気に入っていた安宿-水はときどき止まるが、部屋はきれいだった-が滞在中にいきなり料金を上げた。150ケニアシリングを260ケニアシリング上げるという、相当に思い切ったことをしてきた。モノにはなんでも妥当な値段というものがある。150ケニアシリングは妥当だったが、260ケニアシリングは「プアーバリュー」だ。仕方がないので新しい宿を探すことにした。

どんな街へ行っても、ホテルというのは料金別にまとまって、ご近所どうしに固まっているものである。近所の安宿を何軒かあたってみることにした。とりあえず、泥棒、クスリ中毒のたまり場など、危なそうなところはさける。

何軒めだったかは忘れたが、比較的手頃な値段でシングルを取ってくれる宿を見つけた。100ケニアシリング。「いいじゃないか、こりゃ」というわけで、部屋を見せてもらうことにした。その部屋が、下のスケッチである(汚くて申し訳ない)。

Nyandarwa Lodging, Nairobiの部屋をスケッチ。これは最大の効率だ!

これはかなりインパクトが大きかった。今までにない、そしてその後現在に至るまでも経験したことのない衝撃である。奥行き2メートル10センチ、幅1メートル15センチ。窓の幅はおよそ40センチ。どう見ても快適そうではないのだが、この部屋のスケッチを描きたくなった。「部屋のスケッチだけ描かせてくれ」という勝手は聞いてくれなそうな雰囲気だったので、一晩泊まってみることにした。

早速仕事にかかったものの、スケッチはすぐに仕上がってしまった。当然といえば当然。描くようなものはほとんどないんだから。

絵を描き終わると、「閉所恐怖症」という持病があることを思い出した。私の閉所恐怖症は相当に症状が重い。飛行機は窓側でないと息苦しくなるから、国際線なら3時間前にはカウンターにならぶ。カラオケボックスではいつもおとなしくしている(か、あるいは急性の症状を起こして暴れている)。

結局、ほかの宿にもう一部屋とることにした。この部屋にいたのは1時間にも満たなかった。