ひとことば

鍵穴からのぞいているような写真。鍵穴の向こうにうっすらピンクがかったエル・カズネ。

エル・カズネ

ペトラ

観光客向けの馬に何回か追い越されながら、絶壁の隙間を歩いてゆく。声が反響する具合が面白くて仕方なかった。叫んでみたり、ぼそぼそ呟いてみたりしているうち、エル・カズネが見えてきた。

神殿の前には、欧米の観光客が大勢いた。みんな結構な歳である。一挙手一投足を見ているだけで心配になってくる人もいるが、インディー・ジョーンズで見たとおりの景色を確認して、異国の旅の雰囲気に浸っているようだ。


三角の山に張り付いたようなエド・ディル。人はぐんと少ない。

エド・ディル

エル・カズネまでは観光客もたくさんやってくる。けれども、ペトラの本当の宝物は、そこから小一時間歩いたエド・ディルだ。エル・カズネよりもずっと大きくて、ずっしり佇んでいる。

長い時間客を歩かせるのは、旅行会社にとって具合の悪い話だ。歩ききれない参加者が出るかもしれない。ツアー旅行には、この本当の宝物を外したものが多いようだ。

本当のことを知ったからといって、必ずしも幸せになれるわけではない。年配のツアー客が楽しそうに馬に乗っているのを見ながら、そんなことを考えた。


30メートルぐらいある屋根に登り、記念写真。

エド・ディル

前の年、A型肝炎をアフリカ旅行の土産にしてしまった。日本の医者はこの病気に馴染んでいない。感冒と間違えられて症状は悪化し、2ヶ月以上入院する羽目になった。危なかった。

この旅行では、いつになく自分の写真を撮ったものだ。エル・カズネに比べると、観光客はぐんと少ない。エド・ディルの屋根まで登る酔狂な御仁は、待っていても現れなかった。

セルフタイマーをセットして、エド・ディルの屋根を飛び跳ねる。高い。そして、歩きにくい。決死のセルフタイマーだ。


偉そうに腕組みして、それでいて妙に色気のある女の子。

ペトラの村

ペトラでは遺跡をめぐるのが観光客の仕事だ。日が暮れてしまえば、仕事は終わりになる。

夕暮れどき、宿の近くで子供のやるサッカーに混ぜてもらう。男の子ばかりかと思っていたら、やんちゃな女の子も何人かいる。

ここでの「親分」は、彼女だった。外人と「謁見」する役割も彼女の独占だ。アラブの女の人は強い。今ごろどんな暮らしをしているんだろうと思う。